12/31/2010

2010年という時間

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おかげさまで、今年は、海外個展、(スペイン・フランス・デンマーク)、名古屋・大阪ワークショップ開催、テレビ、新聞、雑誌のメディア取材、寺子屋「遊庵」スタート、パリ・フィメール国際美術展の公募3点入賞、大鼓とのコラボレーション、など、まあビックリ、ホント信じられない、の、想像を超える展開が続いた一年でした。

夢は願い続ければ叶う、というけれど、願う前に、色々な試練をいただける日々で、これは、もっと深く思考せねば立ちゆかぬ、と気づき、今まで手に取らなかった本を熟読し、先達の残した言葉にあらためて共鳴させられるようになりました。

そしてますます、日本というものを考えるようになりました。

メディアでも、日本の文化や職人を取り上げるようになってはきましたが、単なるブームで終わらせられないように、太い根っこを作ろうと、思っています。
「職人が元気になれば、日本も元気になる。」

来年は、海外からのご招待をいただけるようになりました。
本当にうれしい!

そこで精いっぱい、日本の寶を、伝えてきます。
「感じる漢字、古代文字」を通して、日本の精神文化や、そこから生まれた伝統文化を、わかりやすく、楽しく、伝えてこようと思っています。

来年も、大きな展開が皆様と共に出来るよう、やっていきます。
ブログをチェックしてくださったみなさま、ありがとうございました。

素敵な新年をお迎えください!!

 

12/25/2010

初めての依頼

Sumo

「化粧回しを作るときには、ぜひ、書いてください。」
クリスマスパーティで出合った若い力士は、私の名刺を見ながら、そういった。古代文字の意味を説明した後だった。

相撲と書道が、子供の時から好きだったんです。
北の海部屋の、「北海龍」さん、おっきい。186.5センチ 143.5キロ。若い。24歳。

「BS放送なら、1時くらいに出ています。」なるほど、幕下でもTVで観られるんだ。力士として9年で、いまは三段目。 それが早いのか遅いのかわからないけれど、スポーツ選手は、努力し続ければ、ある日突然開花していくものだ。

苫小牧出身。「ホッキ貝が有名です。」

なるほど。。。でも、パンチにかける。

ふと思った言葉を口にした。「それじゃ、あなたが苫小牧の顔になればいい!」「あ。そうします!」表情が、輝きだした。いいな、すごくいいな。

大関になったら、ぜひ、化粧回しを作ろう。谷町千人集めて、すごいの作ろう。私の頭の中には、すでに、まわしを締めて立つ、大関の姿が浮かんだ。

龍のように強くなれ!北海龍 卓郎。

先の楽しみが、また一つ増えた。
すごくビッグな、楽しみが!

 

12/24/2010

クリスマスに贈る、古代文字 

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ラジオからは、いつものようにクリスマスソングが流れ続けています 。

あなたに、素敵なクリスマスが、おとずれますように! 

この、おとずれ。
いまは「訪れ」と書きますが、ほんとうは、 「音ずれ」。 神様がいらした気配、をあらわす文字なのです。 

「立」と「日」が合わさった「音」。
その「日」の部分が、「口(さい)」という、お祈りを入れておく器。
そのなかに、何かが入った。いらした。
きっと、かさっとか、何か現れたような音がしたのでしょうか。 

なので、音づれ。

その中に、なにかがある、というのを現わすため、「音」は口の中に点が打たれていましたが、今は横線になってしまって、「日」になっているので、なんだか意味が伝わらないですね。  
この「日」は、色んな意味の文字がごっちゃにされていて、本当にややこしいものなのですが、それはまた、次回。

今宵は、あなたの枕もとに、すてきな「音ずれ」がありますように。

メリークリスマス! 

 

12/17/2010

遊ぶ、ということを探ってみる。 

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「遊ぶものは神である。神のみが、遊ぶことができた。」
白川静の「遊字論」の一説だ。

古代文字では、旗を持つ子供の姿。
天遊の名前にも入っている。

ある哲学者いわく、遊ぶというのは、娯楽、暇つぶし、気晴らし、の一方、華道、茶道、武士道など、「道」を極める世界も、入るそうだ。

「遊は絶対の自由と、ゆたかな創造の世界である。
それは神の世界に他ならない。
この神の世界にかかわる時、人もともに遊ぶことができた。」(遊字論)

確かに、古代文字アーティストとして独立してからは、作品をよくするために書きこむのではなく、多くの時間を、何のために書くのか、書きたいのか、書きたくないのか、という、自分自答をしている。

面白いもので、ふと手にした本や、誘われて行ったイベントから 次々に繋がって、まるで何かに導かれるようにひらめくことが、多々ある。形のない何かに導かれ、気づかされているのかも?と思いたくなる。

遊びは、ゆたかな創造の世界なのだ。

「神は常には隠れたるものである。
それは尋ねることによって、はじめて所在の知られるものであった。」(遊字論)

技術だけを磨くのではなく、その工程、過程で、何に気づかされるのかが、「道」なのだ。

もっと無心に、遊びたおそう。

 

12/14/2010

筆を味方にしよう 

某大手企業から電話をもらう。 

わが社の社長に、書の手ほどきをしてもらいたい。 数日後に本の出版が決まり、その時サインをしなくてはならないので、なんとか頼む、といわれた。 

世襲社長の三代目は、普通守りに入る、と言われるのだが、あにはからんや彼は就任以来、業績を伸ばし続け、不況知らずというツワモノ。 まだ40代の若さだ。 

サラブレッドの若社長、仕事はバリバリ、留学体験あり、英語、フランス語を自在に操るバイリンガルだが、何故か文字だけは苦手で、相当の「悪筆」なのだという。 

「あの、そのような大役は、書道家の先生の方が。。。私には。。。」と何度も云ったのだが、頼みますよ、の一点張り。多分、急遽来てくれる書家がいなかったに違いない。 偉い先生は、忙しいのだ。

名前と、座右の銘をお願いします、と言われてたけど、古代文字で書かせるわけにもいかず、かといって、普通の書家とはちょっと差異を出したく、、、 

まず、図書館へ行って、武将の名筆をじっくり鑑賞。 その後夜まで、行書、草書、隷書、楷書、そして、古代文字で、 書きまくった、社長の名前と座右の銘。 あの、墓石を書いた時と同じく、部屋中に和紙が貼られていった。 深夜に、印を彫った。

そして翌日、硯や筆、和紙、印泥など一式ひきずっていく 。ビルのエレベーターが開くと、お出迎えのスタッフが並んでいて、「先生、こちらです」と、社長室へと案内してくれる。ガラス張りの、社長室。 

社員たちが「書家って、あの人?若いじゃん!」という感じで、興味津津に見ている。与えられた時間は、1時間。15分は、古代文字のことを話した。残り、45分。私は全く駄目なんですよ、と言い続ける社長。まず、書いてもらう。 

。。。。。。。。。 

予想以上だった。

ならば。いつものように一本線を引くところからスタート。気分は、組員の扱いになっていた。 教えながら、どんどんイメージが広がっていく。
書の枠なんて、取っ払いましょ、行書のリズムを、今風にしましょ、そうそう、よくなった! 書いて、どんどん書いて、楽しく書いて!! 

(省略)

「久々、集中したなぁ~。書は楽しんで書けばいいんだね。」
素敵なサインができた。 

秘書を始め、みな、心底ホッとした顔をしていた。落款を捺すと、もっと素敵になって、私もホッとした。
社長はとても素敵な人だった。これからもこの企業は、成功していくだろうなと思った。才能ある人に、悪筆が多いような気がする。

下手なのではなく、個性的なのだと、解釈すればいい。そして筆は、どんな悪筆も、味にしてくれる。

一つづつ、何かをクリアーすると、一つ発見がもらえる。
楽しいなぁ~。